2013年07月19日

東京国際ブックフェアで高木前事務局長が講演しました!

東京国際ブックフェアで高木前事務局長が講演しました!東京国際ブックフェアで高木前事務局長が講演しました!東京国際ブックフェアで高木前事務局長が講演しました!

7月3日(水)~6日(土)に東京ビッグサイトで行われた「第20回東京国際ブックフェア」で、7月4日(木)10~11時、第1回静岡書店大賞(SST)事務局長の高木久直さんが講演を行いましたicon12

“「静岡書店大賞」が地域と書店にもたらしたもの~情報発信する書店員たれ!~”と題して、熱く
語られました。講演録の文章起こしも読ませていただきましたが、とても面白い!高木さんの熱意
と行動力に改めて頭が下がり、感動しました!当日、聴講者に配布された資料をご紹介しますface02

●講演アブストラクト

 書店員の情報交換・発信ツールとしてSNSの利用が増えている。業界だけでなくメディアや読者
を巻き込み一大イベントとなった静岡書店大賞は、正に現場書店員の発信力が大きな力となった。
書店員の能動的な発信で生まれる新しいビジネスの可能性を語る。

●プロフィール

 1970年静岡県生まれ。中学校講師を経て、97年戸田書店に入社。入社一年という早さで菊川
店開店店長に就任。書店は人類文化の縮図という観点をもち、常に色ある店舗作りを目指す。
本と関連する商品を組み合わせた独自のフェアには定評がある。これまで4店舗の出店を任され、
現在掛川西郷店の店長・静岡地区エリア長を務める。2012年静岡県内の全書店に声をかけ、
静岡県独自のオープン文学賞「静岡書店大賞」を発足させる。

●紹介

 2012年12月1日、「静岡書店大賞」(SST)を発表いたしました。静岡書店大賞は、静岡県内で
営業する全ての新刊書店(従業員全て)が投票権を有し、その投票結果のみで大賞を決定する
独自のオープン文学賞です。初となる第一回目の昨年は、「小説」「児童書新作」「児童書名作」
の3部門で大賞発表いたしました。静岡県内の書店170店舗弱がフェアに参加し、612名という
多くの書店員が投票に参加いたしました。企業や取次の枠を越え、多くの参加者を集めた経緯
SNSが果たした役割などを本日はお話ししたいと思います。

●静岡書店大賞開催に至った経緯

 昨年の総務省統計局の調査で、静岡市は一世帯当たりの年間書籍購買額が全国で38位
報道されました。読書県との認識が強かった我々書店員は驚きました。朝読などにも力を入れ
ている県なので、これは書店としてアピールが不足しているんだと、もっと頑張らねばいけない
と痛感しました。そこで、企業単位ではなく、垣根を越えた全書店が参加可能な取り組みはでき
ないかと、書店員の懇親を重ね繋がりを深めていった結果が静岡書店大賞設立のきっかけと
なりました。

●多くの書店・書店員たちはこのように集った

 静岡を西から東まで、知っている限りの書店に企画の趣旨を説明しながら巡りました。しかし、
カバーできる書店はせいぜい50件くらいで、取次はみんな異なっていました。そこで取次全て
の説得に腐心
し、結果、我々の書いた手紙や投票用紙を一斉に撒いてもらうことに成功しま
した。

 最も重要だったのは、大賞が決まったら商品は何部欲しいのか?を各書店に聞き取り調査し、
基礎数字の把握をする事でした。全国に文学賞は数多くありますが、結局、話題書になれば
なるほど、町の書店には商品が入ってきません。そうすると、このような企画をやろうとした時
「大きな書店でやる話でしょ。発注しても入ってこないのだから。」と町の書店が置き去りになり
ます。だから、水面下で大賞が決まった瞬間、私と実行委員で『静岡にある全ての書店分』の
商品仕入交渉に出版社を巡りました。そして、その仕入れた本は、小さな町の書店にも希望
数が行き渡るように、取次に割り振りました
。そして170件近くの書店が参加するフェアにする
事が出来ました。我々自身も本当に驚きました。

 新刊書店だけで見れば、大多数の書店が参加してくれました。その中には、通常児童書は
置いていないけれど、静岡書店大賞の時だけは置いてみよう
という書店もありました。

●県民読者には徹底的にアピール

 折角やるのだから、こうした取組みは、書店だけの内輪の盛り上がりにしたくありませんで
した。県民読者を巻き込んでこそ真価が問われる読書推進活動にしなければいけない。綺麗
ごとは抜きにして、実売を上げていく事が書店として社会貢献の一つと考えておりました。
そこで、県内にある新聞、ラジオ、テレビ、出版などありとあらゆるメディアには全て声を掛け
かせて頂き、大賞発表まで、発表後の報道をお願いして回りました。

 結果、大賞発表前後の県内では情報伝播がものすごい勢いで広まりました。静岡県が読書
推進に向かうこと、それは書店だけではなく官民一体となる事も必要と考え、県知事にお手紙
させて頂きました。「県の各図書館でも連携してコーナー展開いたします」と連絡があった時、
静岡県が一丸となったのを実感しました。今後への流れが出来たとは、非常に嬉しかったですね。

 12月1日、静岡書店大賞発表と同時に、県下書店・図書館に一斉にコーナーが設置されました。

●投票の集計作業

 予想以上に多くの書店員(612名)が投票してくれたのは、投票方法が簡単だったのが最大の
理由でしょう。パソコンを使えない年配の書店員のことを考え、紙の投票用紙を主とし、投票は
郵送でも、FAXでも、持って来てくれても、メールでも、何でもOKとし、一作品でも読者に薦め
たい本があれば是非参加して下さいと訴えました。

 結果、想定していた以上の投票に、集計作業は大変なものとなりました。

●入賞作は、オリジナルの帯で

 なにぶん初めての事だらけで、投票の締め切りから大賞発表まで一カ月も余裕がないタイト
なスケジュールの中、全ての出版社が重版からオリジナルの帯作成まで我々の要望に応えて、
しっかり間に合わせてくれました
。店頭に並ぶまで出版社や取次の皆様の協力は無くてはなら
ないものでした。他の本との違いを際立たせる為に、オリジナルの帯は大変重要な役割を果た
しました。

●大賞コーナーの設置に際して

 各書店が店頭にコーナーを設置するにあたり、事務局として飾付用のPOP、ポスター、パネ
ル、フリーペーパー(データ)などの飾付セットを用意し提供しました。12月1日、大賞の発表は、
参加書店の店頭、公式ウェブ、SNS、新聞紙上、ラジオ、テレビにて行われました。

●静岡書店大賞の今後

 将来にわたって静岡の若い書店員たちに引き継いで行ってもらいたいと思います。そして、
静岡書店大賞(SST)で選ばれた本が、いつか全国に羽ばたいていって欲しいと願います。
大賞を選んで終わりではなく、読者にしっかり提案できてこそ、はじめて読書推進活動に繋がり
ます。

 そして、方法は色々あると思いますが、静岡書店大賞(SST)のような垣根を越えた取り組み
は静岡だけでやればいいという事ではないでしょう。全国には、やる気のある書店員が数多く
おります。自らの店舗を盛り上げるのは当然のこととして、その力の一部を地域全体に向けて
欲しい
と思っております。

 静岡書店大賞(SST)は起爆剤としての一例です。リアル書店を取り巻く状況で、あまり良い
話は聞くことがない昨今。でも決して諦めて欲しくないんです。伝え方一つ変えるだけで、紙の
本屋はまだまだいけると思うし
私は書店を楽しみたい。全国の書店員の皆さんに常にエール
を送りたいです。

●書店員として最も印象に残っている出来事(最後は、フランクに・・・)

 今から10年以上も前のこと、オートバイ本のフェアをやった時に、新車のハーレー・ダビッド
ソンをフェアの真ん中にバーンと置いてみました。そしたらまさか200万円もするハーレー・
ダビッドソンが本屋で売れちゃったんですよ
。(笑)

 この経験で、本は本屋、オートバイはオートバイ屋という常識に囚われちゃいけないんだと
思うようになりました。せっかくお客さんが店に足を運んでくれるんだから、本にプラスアルファ
で楽しんでもらいたいと思うようになったんです。何より、本屋には人類文化の全ジャンルが
存在しますから。雑貨、玩具はもとより、楽器、オートバイ、ウエディングドレス、鎧…。コラボ
したいなって思った異業種企業には、実際に足を運んで飛び込み営業をしてみるようになり
ました。3割くらいは断られますが、当たるも八卦当たらぬも八卦。ボクらの本業はやっぱり本
なので、コラボ商品で稼ごうという気は全くありません。大きなPOPがそこにあると思ってくれ
ればいいんですよ。お客さんが本屋に行ったら、こんな面白いものも発見しちゃったよ!という
空間づくりの為に。何よりボクが楽しむためにもやっています。

 ボクが大切にしていることは「楽しそうだな、と思ったらやってみようか。」という感覚と、「
がやらないなら、ウチはやろうか
。」という感覚。

スタッフで何かやってみたいことがあれば遠慮無く提案して欲しいし、チャレンジして欲しいと
いつも思っています。最近では歳のせいか、ボクより若い従業員が書店員として成長したなぁ
と感じる瞬間一コマ一コマが何より嬉しいです。本屋って価格競争ができないし、じゃあ何が
違うのかといえば、やっぱり「人」が最高なんですよね。全てがそこにあると信じています。
後進を育てるのも今のボクの仕事だと思って、日々、本屋道に励んでおります。

 本日は、拙い話にも関わらずセミナーへの参加有難うございました。これも何かの縁だと思
います。今後、皆様と何かの機会に繋がることが出来たら最高だと思います。静岡の方面に
お越しの際は、是非遊びがてらお店にお立ち寄りください。事務所にて、掛川深蒸し茶程度は
出しますよ!(笑)

※書店調査会社のアルメディア(東京都豊島区)の調査によると、平成24年5月1日現在の
全国の書店数は14,696店舗で、平成12年の21,654店舗から約32%も減少。静岡県内の
書店数も平成12年の643店舗から420店舗に減少の一途をたどっている。



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Posted by 静岡書店大賞SST at 13:15 │ご報告