2017年12月30日
第6回 静岡書店大賞 授賞式のご報告
12月5日(火)17:00~18:00、第6回静岡書店大賞授賞式を、昨年と同じく「しぞ~か本の日!」の
一環として、グランディエールブケトーカイ4階で開催しました。今年はロビーで行い、昨年よりも
多くの方にご参加いただきました。
「しぞ~か本の日!」書店大商談会のプログラム冊子です。今年も日販の川田さんが中心となり
製作してくださいました。静岡書店大賞の実行委員会ご挨拶、授賞式プログラムや過去の受賞作
も今年も入れさせていただき、感謝です。取次店、書店の垣根を越えたこのプロジェクト、多くの
方々のお力により実現できるもので、大変貴重でありがたいものです。
今年の看板はグレードアップし、写真撮影で手持ちしなくても大丈夫な状態になりました(^^)/
素晴らしいです。ヤッター!!
授賞式開始前の様子です。メディアの方々もたくさんいらしてくださいました。また今年は書店員・
図書館員以外に、読み聞かせや読書推進活動をされている一般の方数人にお声かけをさせて
いただきました。井上靖文学館の徳山加陽さん、どくしょ塾の村上淳子先生、静岡県読み聞かせ
ネットワークの勝山高さん、おはなしかごの殿岡千鶴子さんと石川明美さん、ご参加くださり、
ありがとうございました。
まずは小川事務局長からご挨拶。「飛行機が止まり、近隣ホテルも
満杯。さて今あなたの隣にいる人と一緒に空港で一晩、閉じ込め
られても大丈夫ですか?耐えられますか?ここ笑うとこなんです
けど(^^;)静岡書店大賞実行委員は一緒に喜んでいられると思い
ます。創始者の高木さんを中心として、全員が静岡書店大賞を
楽しみながら真剣に取り組んでいるミーティングは大変興味深く、
勉強になりました。さまざまな意見を自由に言い合い、それを全員
が敬意を持って検討し、何よりもみんな本が好きだという気持ちを
ぶつけるんですね、これは本当に楽しいひと時でした。過去最高の802人の投票がありました。
これは図書館員さんが4倍という快挙を成し遂げた影響でした。この勢いはまだまだ止まりません。
皆さまのお力をお借りして、来年再来年と継続してまいります。もっともっとこの静岡書店大賞を
盛り上げていきます。」と、実行委員皆も感動のご挨拶でした。
今年も副賞の「ご当地サイダー詰合せ」をご提供くださった㈱木村飲料の木村英文社長さんからは
「指導要領が変わり、これからは詰め込み式ではなく、新しいものを生み出す、世界と同じスタート
ラインに立ちます。私は大学4年間で千冊本を読む目標を立て、1日1冊のペースで本を読みました。
活字を読むことはものすごく頭脳取引になり、新しいユニークな商品を作れる土台になっている。
若い人も本を読んで無から有を生み出すような、本の中からイマジネーションをもらい、世界を引っ
張る日本人の進むべき方向かなと思っています。」と、本のエピソードを交えたお話をいただきました。
木村社長三のユニークなアイデアには本の力があったのですね!嬉しいお話でした。
いよいよ表彰です。まずは映像化したい文庫部門。大賞作は文芸社 小坂流加さんの『余命10年』です!
静岡書店大賞 実行委員の宗形康紀さん(マルゼン&ジュンク堂書店)からトロフィーを贈呈です。
小坂さんは文庫の発売を待たずに旅立たれました。代わりにご両親の小坂有司さん・照子さんご夫妻
がご登壇くださいました。お父様の有司様が「書き終わってその日といっていいくらいに息を引き取って
しまいまして…。この病気はこうなるよと病院から言われていたのですが、書くことに情熱を燃やし、命を
削って書いたのかなと思います。人に世話になっているばかりで、何か人のためになれないかなと言って
おりましたが、人が生きることの大切さというか大変さといいますかが書かれていて、大勢の方に読んで
いただいたことで、これで少しは恩返しかなと親として思います。」と、お話くださいました。姉妹の方々も
おみえくださり、すばらしいご家族に流加さんの人となりを感じましたし、ありがたく思いました。物語が
より一層胸に迫るものとなりました。
続いて小説部門の大賞作はKADOKAWA 伊坂幸太郎さんの『AX』に決定いたしました!残念ながら
欠席の伊坂幸太郎さんの代わりに、KADOKAWA 編集担当の岡田博幸さんに、静岡書店大賞実行委員
山本明広さん(BOOKアマノ)より、トロフィーを贈呈。
岡田さんが、伊坂さんからのお手紙を代読くださいました。「AXは5つの短編が収録されていますが、後半
の2つの短編を完成させるのには1年以上かかってしまいました。どうやってこのお話を完結させたらいい
のか分からなくなったからです。悩んだ末に親が子どもに何かをのこす話、これならば書けるのではないか
と思い、このような物語になりました。悩みが多かっただけに読んだ人の反応がこわかったのですが、こうして
書店員の方たちに面白いと思っていただけて本当にホッとしています。もう少し頑張ろうと思います。どうも
ありがとうございました。」と、知らなかった小説ができあがるまでの貴重なお話を伺え、嬉しかったです。
伊坂さんからは直筆色紙が。AXの主人公は兜ということでカブトムシのイラストを描いてくださいました。
続いて児童書新作部門です。第3位はPHP研究所 ヨシタケシンスケさんの『なつみはなんにでもなれる』に
決定しました!ヨシタケさんは昨年の児童書新作部門1位・2位のダブル受賞に続いての受賞となります。
「なつみちゃんという女の子がお母さんにクイズを出すのだけど、お母さんは一つも答えられないというお話。
親子で問題を出し合うのだけど、ひとつも分かり合えない。お母さんは子どものことを分かってあげられない、
でも決してお母さんは笑わない、かといって怒っているわけではない。実際子育てしていて思い通りにいかない
こともたくさんありますし、つらいこともたくさんあるんだけれど、なにげない子どもとのやりとりの中に楽しさとか
幸せっていうものがあるんじゃないかな。幸せっていうのは分かり合わなきゃいけないものじゃなく、なかなか
通じ合わなくても、笑顔でなくても幸せっていうものを表現できるんじゃないか。」と、今年も心に響く素敵なお話
をしてくださいました。ヨシタケさんのお話にホッとして救われる子育て中の方が多いのではないでしょうか。
ヨシタケさん、今年もご参加くださり、本当にありがとうございました。
児童書新作部門、第2位は 偕成社 いわいとしおさんの『そらの100かいだてのいえ』に決定いたしました!
いわいさんは3年前に『うみの100かいだてのいえ』で大賞を受賞されています。残念ながら欠席のいわいさん
に代わり、偕成社 橋村さんに、静岡書店大賞実行委員 原川さん(谷島屋書店)から、トロフィーを贈呈。
橋村さんが、いわいさんからのお手紙を代読くださいました。
「3年前の『うみの100かいだてのいえ』に続き、今回も『そらの100かいだてのいえ』を選んでくださり、ありがとう
ございます。とても嬉しいです。僕が静岡県の伊豆半島で暮らし始めて6年が経ちます。伊豆の自然豊かな環境
の中で、広い空の色や雲の形の変化、鳥や植物の成長を目にするうちに、この絵本が自然に生まれてきました。
この絵本の中に描いたのは僕自身の妄想の世界ですが、その妄想にはたくさんたくさんの伊豆のそして静岡の
空気を吸い込んで出てきたものです。たくさんのつまりこの絵本には静岡の空気がたくさん詰まっています。
静岡発の『そらの100かいだてのいえ』、今後ともよろしくお願いいたします。」と、思わず伊豆の美しい空の色が
思い浮かぶような、そして静岡発という嬉しいコメント、ありがとうございました。
そして児童書新作部門 大賞作は 金の星社 ふくながじゅんぺいさんの『うわのそらいおん』に決定いたしました!
静岡書店大賞 実行委員の新村英希さん(江崎書店)からトロフィーを贈呈。
「『うわのそらいおん』はデビュー作で、とても思い入れが強い作品。幼少期住んでいた団地の隣に本の森という
小さな町の本屋さんがありました。今そこはコンビニになってしまっています。本の森に入りびたり、本に囲まれた
幼少期をすごしました。絵本から始まり、児童書、小説、マンガ、雑誌、いわば本に囲まれた人生を歩んできました。
書店員さん・図書館員さんが選んでくれたということはとても嬉しく幸せなことです。」と、本が大好きで本とともに
歩んでこられたという ふくながさんのお話、ジーンとしました。静岡市在住、葵区のアトリエで活動されているという
まさに地元の作家さん、これからも応援していきます。
最後に児童書名作部門 大賞作の発表です。大賞は こぐま社 わかやまけんさんの『しろくまちゃんのほっとけーき』
に決定しました!わかやまけんさんは故人ですので代わりに先生のご担当だった編集長 関谷裕子(せきやゆうこ)
さんに、静岡書店大賞協力委員 八木麻美さん(静岡県立静岡中央図書館)からトロフィーを贈呈。また、絵本の中
から、こぐまちゃんも来てくれました!会場は一気に盛り上がりました!
関谷さんから「わかやま先生は残念ながら2年前にお亡くなりになりそれが今年あきらかになって、一時こぐま社のHPがダウンするくらいワッと問い合わせがきまして、本当にわかやまけん先生とこぐまちゃんは皆様に愛していた
だいていたのだなと改めて分かりました。15人しかいない小さな出版社ですが、この『しろくまちゃんのほっとけーき』
は1972年に出ましたけれど、一番新しい刷りで2215刷り。297万2千部。現役で本を作っている身からすると、結構
つらいものがあるんですが、何を出しても常に一番、毎年この本が一番たくさん皆さんに愛されているものとなって
います。嬉しいことに愛読者カードで何でこの本を買いましたか?との質問に、『小さい頃に読んでいたから』『息子に
読んでいたものを孫に』『知っていたけれど買いました』などと書いていただいて、嬉しい。よく見てくださっている方、
図書館の方からお問合せが時々あるのですが、奥付には、わだよしおみ、もりひさしという3人の先生が書かれて
います。この3人とこぐま社の創業者が4人で、合同で作ったもの。実際スタッフは7人で、いい年の男の人たちが皆で
ほっとけーきを焼いてどんな音がするのか耳を澄まして、そしてこの本を作ったというなかなか知られていないこと
なので、今日ここで紹介させていただきました。」と、名作誕生の貴重な秘話をお話いただきました。誕生当時の様子
を想像し、思わず微笑んでしまうエピソードでした。関谷さんのお話で、より愛しい作品になったと思います。
第6回静岡書店大賞2017 規定4部門すべてが出そろい、今一度、盛大な拍手がおくられました!
受賞作家さんたちを囲み、書店員・図書館員が記念撮影です。こぐまちゃんもいて、何とも楽しい撮影に♪
丸林篤史 副事務局長の閉式の挨拶後、18:15~19:45、シンフォニーにて懇親会に。司会は今年も、
静岡書店大賞実行委員 島原あきさん(戸田書店)です。今年も和やかな進行、よかったです!
開会のご挨拶は今年も静岡書店大賞実行委員長 江崎直利(藤枝江崎書店)より。「腎臓はおとなしいけれど
ないがしろにしてはいけない。書店も図書館も一緒です。機能が衰えたら不自由ですけど生きていけますが、
なくなったら完全に毒がまわってしまいます。健康でいるために、人間の体温と同様、紙のぬくもりというものを
信じ大切に保持増進をしていきたいと考えています。 必要な他の臓器が元気でいるためにももっと本と出会う
場所を増やし、相互を尊重し敬意を払い、補いながら役割分担に務めなければならないと考えております。私は
想像力や読解力不足の人間が住む町は共感力にとぼしくて住みにくいと思います。だから運動不足と言われない
ように、本屋ももっと本を知り、手間を惜しまず、頭と足を動かし、長生きしていかなければならないと考えています。
この会はそのために良い場所と機会にしていきたい。」と、腎臓を交えたいいお話でした。
乾杯のご発声はKADOKAWAの高橋さんに。「静岡書店大賞、回を重ねるごとに書籍の売上が右肩上がりという
ことで、実行委員会の皆さんの努力でここまで大きくなったというところで、10回20回、50回100回と、静岡県民の
文化に根付くというところまでいけたら本当に嬉しく思います。」と力強いエールをいただきました。
中締めのご挨拶は静岡県立中央図書館 館長 河原崎全さん。「自主的にやるというのはある意味不安定なところも
ありますが、気持ちがこもっている分だけ強いイベントだと思う。皆様方の気持ちに支えられて6回めになったのかな
と思います。図書館も途中から加えていただき、昨年より4倍の投票と聞きました。ただ元の数が少なかったものです
から、絶対数はそれほどでもない。来年また4倍になるか保証はありませんが、呼びかけていきたい。大商談会の方
も市町の図書館にお声かけをさせていただきました。地方では図書館と書店が手を組んでいろんなことをやっていき
ましょうということが広がるのではないか。静岡はこのイベントをひとつの起爆剤にして、書店、図書館、本を作って
くださる出版社の方がタッグを組んでいけたら一番いいのかなと。11/6の県の図書館大会で『あるかしら書店』を紹介
させてもらいました。「あるかしら書店」という書名ですが、その中にラブリーラブリーライブラリーという項目があり、
図書館の職員として元気が出るといいますか、嬉しいな、心があったまることが書いてあります。一冊の本の中に
書店さんと図書館の両方が一緒になっているというのは嬉しいなと思いました。これからも皆で出版文化を支えて
いかねばなと改めて思っております。」と、書店・図書館の協働の背中を押していただくメッセージ、嬉しかったです。
最後に、静岡書店大賞 創始者である高木久直さん(戸田書店掛川西郷店)から締めのご挨拶。皆さん、聴き入っていました。
「6年前、伊豆の方から湖西の方まで、休日を利用して書店の経営をしている皆さん、店長の皆さんにこういうのやりたいねと話をしたのが5年前。週休2日の3ヵ月間を書店まわりに費やしました。おそらく静岡県を回っているどこの出版社の営業さんよりも静岡の書店に足を運んだ3ヵ月間だったのではないかなと思います。ただその頃には目の前に広がる光景、
全く想像ができませんでした。今日聞き及んだところによりますと、ここに
お集まりいただいた方は390名に上ると聞いております。390名ですよ。
ぼくら書店、図書館、静岡の出版業界に携わる皆、ものすごい力をいた
だきました。感激しております。今日いただいたパワーを今ここだけの盛り上がりにしてはいけないと痛切に感じております。内輪の盛り上がりに留めることなく、今から読者を育てる、読者をクリエイトする、読者を育む、そういう活動に前進していかなければならないのではないかと痛切に感じております。今日は静岡の葵タワーにお集まりいただき、感謝の念に堪えません。また来年再来年、この取り組みが続けられるよう我々実行委員も頑張ってまいります。何とぞ応援のほどよろしくお願いいたします。」
高木さんが訪ねて来てくださった日、忘れません。自らの意志でたった一人で県内の書店をまわっていると伺い、
その熱意と真摯な姿勢に心打たれました。思いはあっても、実現はなかなかできないことだと思います。実行力、
本当に頭が下がるばかりです。継続は力なり、来年も気持ちを一つに頑張っていきたいです。
静岡県内の書店、図書館で静岡書店大賞のフェアを展開しております。多くの方々に受賞作品を楽しんで
いただけるよう、これからも力を入れてまいります。皆様、2018年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
一環として、グランディエールブケトーカイ4階で開催しました。今年はロビーで行い、昨年よりも
多くの方にご参加いただきました。
「しぞ~か本の日!」書店大商談会のプログラム冊子です。今年も日販の川田さんが中心となり
製作してくださいました。静岡書店大賞の実行委員会ご挨拶、授賞式プログラムや過去の受賞作
も今年も入れさせていただき、感謝です。取次店、書店の垣根を越えたこのプロジェクト、多くの
方々のお力により実現できるもので、大変貴重でありがたいものです。
今年の看板はグレードアップし、写真撮影で手持ちしなくても大丈夫な状態になりました(^^)/
素晴らしいです。ヤッター!!
授賞式開始前の様子です。メディアの方々もたくさんいらしてくださいました。また今年は書店員・
図書館員以外に、読み聞かせや読書推進活動をされている一般の方数人にお声かけをさせて
いただきました。井上靖文学館の徳山加陽さん、どくしょ塾の村上淳子先生、静岡県読み聞かせ
ネットワークの勝山高さん、おはなしかごの殿岡千鶴子さんと石川明美さん、ご参加くださり、
ありがとうございました。
まずは小川事務局長からご挨拶。「飛行機が止まり、近隣ホテルも
満杯。さて今あなたの隣にいる人と一緒に空港で一晩、閉じ込め
られても大丈夫ですか?耐えられますか?ここ笑うとこなんです
けど(^^;)静岡書店大賞実行委員は一緒に喜んでいられると思い
ます。創始者の高木さんを中心として、全員が静岡書店大賞を
楽しみながら真剣に取り組んでいるミーティングは大変興味深く、
勉強になりました。さまざまな意見を自由に言い合い、それを全員
が敬意を持って検討し、何よりもみんな本が好きだという気持ちを
ぶつけるんですね、これは本当に楽しいひと時でした。過去最高の802人の投票がありました。
これは図書館員さんが4倍という快挙を成し遂げた影響でした。この勢いはまだまだ止まりません。
皆さまのお力をお借りして、来年再来年と継続してまいります。もっともっとこの静岡書店大賞を
盛り上げていきます。」と、実行委員皆も感動のご挨拶でした。
今年も副賞の「ご当地サイダー詰合せ」をご提供くださった㈱木村飲料の木村英文社長さんからは
「指導要領が変わり、これからは詰め込み式ではなく、新しいものを生み出す、世界と同じスタート
ラインに立ちます。私は大学4年間で千冊本を読む目標を立て、1日1冊のペースで本を読みました。
活字を読むことはものすごく頭脳取引になり、新しいユニークな商品を作れる土台になっている。
若い人も本を読んで無から有を生み出すような、本の中からイマジネーションをもらい、世界を引っ
張る日本人の進むべき方向かなと思っています。」と、本のエピソードを交えたお話をいただきました。
木村社長三のユニークなアイデアには本の力があったのですね!嬉しいお話でした。
いよいよ表彰です。まずは映像化したい文庫部門。大賞作は文芸社 小坂流加さんの『余命10年』です!
静岡書店大賞 実行委員の宗形康紀さん(マルゼン&ジュンク堂書店)からトロフィーを贈呈です。
小坂さんは文庫の発売を待たずに旅立たれました。代わりにご両親の小坂有司さん・照子さんご夫妻
がご登壇くださいました。お父様の有司様が「書き終わってその日といっていいくらいに息を引き取って
しまいまして…。この病気はこうなるよと病院から言われていたのですが、書くことに情熱を燃やし、命を
削って書いたのかなと思います。人に世話になっているばかりで、何か人のためになれないかなと言って
おりましたが、人が生きることの大切さというか大変さといいますかが書かれていて、大勢の方に読んで
いただいたことで、これで少しは恩返しかなと親として思います。」と、お話くださいました。姉妹の方々も
おみえくださり、すばらしいご家族に流加さんの人となりを感じましたし、ありがたく思いました。物語が
より一層胸に迫るものとなりました。
続いて小説部門の大賞作はKADOKAWA 伊坂幸太郎さんの『AX』に決定いたしました!残念ながら
欠席の伊坂幸太郎さんの代わりに、KADOKAWA 編集担当の岡田博幸さんに、静岡書店大賞実行委員
山本明広さん(BOOKアマノ)より、トロフィーを贈呈。
岡田さんが、伊坂さんからのお手紙を代読くださいました。「AXは5つの短編が収録されていますが、後半
の2つの短編を完成させるのには1年以上かかってしまいました。どうやってこのお話を完結させたらいい
のか分からなくなったからです。悩んだ末に親が子どもに何かをのこす話、これならば書けるのではないか
と思い、このような物語になりました。悩みが多かっただけに読んだ人の反応がこわかったのですが、こうして
書店員の方たちに面白いと思っていただけて本当にホッとしています。もう少し頑張ろうと思います。どうも
ありがとうございました。」と、知らなかった小説ができあがるまでの貴重なお話を伺え、嬉しかったです。
伊坂さんからは直筆色紙が。AXの主人公は兜ということでカブトムシのイラストを描いてくださいました。
続いて児童書新作部門です。第3位はPHP研究所 ヨシタケシンスケさんの『なつみはなんにでもなれる』に
決定しました!ヨシタケさんは昨年の児童書新作部門1位・2位のダブル受賞に続いての受賞となります。
「なつみちゃんという女の子がお母さんにクイズを出すのだけど、お母さんは一つも答えられないというお話。
親子で問題を出し合うのだけど、ひとつも分かり合えない。お母さんは子どものことを分かってあげられない、
でも決してお母さんは笑わない、かといって怒っているわけではない。実際子育てしていて思い通りにいかない
こともたくさんありますし、つらいこともたくさんあるんだけれど、なにげない子どもとのやりとりの中に楽しさとか
幸せっていうものがあるんじゃないかな。幸せっていうのは分かり合わなきゃいけないものじゃなく、なかなか
通じ合わなくても、笑顔でなくても幸せっていうものを表現できるんじゃないか。」と、今年も心に響く素敵なお話
をしてくださいました。ヨシタケさんのお話にホッとして救われる子育て中の方が多いのではないでしょうか。
ヨシタケさん、今年もご参加くださり、本当にありがとうございました。
児童書新作部門、第2位は 偕成社 いわいとしおさんの『そらの100かいだてのいえ』に決定いたしました!
いわいさんは3年前に『うみの100かいだてのいえ』で大賞を受賞されています。残念ながら欠席のいわいさん
に代わり、偕成社 橋村さんに、静岡書店大賞実行委員 原川さん(谷島屋書店)から、トロフィーを贈呈。
橋村さんが、いわいさんからのお手紙を代読くださいました。
「3年前の『うみの100かいだてのいえ』に続き、今回も『そらの100かいだてのいえ』を選んでくださり、ありがとう
ございます。とても嬉しいです。僕が静岡県の伊豆半島で暮らし始めて6年が経ちます。伊豆の自然豊かな環境
の中で、広い空の色や雲の形の変化、鳥や植物の成長を目にするうちに、この絵本が自然に生まれてきました。
この絵本の中に描いたのは僕自身の妄想の世界ですが、その妄想にはたくさんたくさんの伊豆のそして静岡の
空気を吸い込んで出てきたものです。たくさんのつまりこの絵本には静岡の空気がたくさん詰まっています。
静岡発の『そらの100かいだてのいえ』、今後ともよろしくお願いいたします。」と、思わず伊豆の美しい空の色が
思い浮かぶような、そして静岡発という嬉しいコメント、ありがとうございました。
そして児童書新作部門 大賞作は 金の星社 ふくながじゅんぺいさんの『うわのそらいおん』に決定いたしました!
静岡書店大賞 実行委員の新村英希さん(江崎書店)からトロフィーを贈呈。
「『うわのそらいおん』はデビュー作で、とても思い入れが強い作品。幼少期住んでいた団地の隣に本の森という
小さな町の本屋さんがありました。今そこはコンビニになってしまっています。本の森に入りびたり、本に囲まれた
幼少期をすごしました。絵本から始まり、児童書、小説、マンガ、雑誌、いわば本に囲まれた人生を歩んできました。
書店員さん・図書館員さんが選んでくれたということはとても嬉しく幸せなことです。」と、本が大好きで本とともに
歩んでこられたという ふくながさんのお話、ジーンとしました。静岡市在住、葵区のアトリエで活動されているという
まさに地元の作家さん、これからも応援していきます。
最後に児童書名作部門 大賞作の発表です。大賞は こぐま社 わかやまけんさんの『しろくまちゃんのほっとけーき』
に決定しました!わかやまけんさんは故人ですので代わりに先生のご担当だった編集長 関谷裕子(せきやゆうこ)
さんに、静岡書店大賞協力委員 八木麻美さん(静岡県立静岡中央図書館)からトロフィーを贈呈。また、絵本の中
から、こぐまちゃんも来てくれました!会場は一気に盛り上がりました!
関谷さんから「わかやま先生は残念ながら2年前にお亡くなりになりそれが今年あきらかになって、一時こぐま社のHPがダウンするくらいワッと問い合わせがきまして、本当にわかやまけん先生とこぐまちゃんは皆様に愛していた
だいていたのだなと改めて分かりました。15人しかいない小さな出版社ですが、この『しろくまちゃんのほっとけーき』
は1972年に出ましたけれど、一番新しい刷りで2215刷り。297万2千部。現役で本を作っている身からすると、結構
つらいものがあるんですが、何を出しても常に一番、毎年この本が一番たくさん皆さんに愛されているものとなって
います。嬉しいことに愛読者カードで何でこの本を買いましたか?との質問に、『小さい頃に読んでいたから』『息子に
読んでいたものを孫に』『知っていたけれど買いました』などと書いていただいて、嬉しい。よく見てくださっている方、
図書館の方からお問合せが時々あるのですが、奥付には、わだよしおみ、もりひさしという3人の先生が書かれて
います。この3人とこぐま社の創業者が4人で、合同で作ったもの。実際スタッフは7人で、いい年の男の人たちが皆で
ほっとけーきを焼いてどんな音がするのか耳を澄まして、そしてこの本を作ったというなかなか知られていないこと
なので、今日ここで紹介させていただきました。」と、名作誕生の貴重な秘話をお話いただきました。誕生当時の様子
を想像し、思わず微笑んでしまうエピソードでした。関谷さんのお話で、より愛しい作品になったと思います。
第6回静岡書店大賞2017 規定4部門すべてが出そろい、今一度、盛大な拍手がおくられました!
受賞作家さんたちを囲み、書店員・図書館員が記念撮影です。こぐまちゃんもいて、何とも楽しい撮影に♪
丸林篤史 副事務局長の閉式の挨拶後、18:15~19:45、シンフォニーにて懇親会に。司会は今年も、
静岡書店大賞実行委員 島原あきさん(戸田書店)です。今年も和やかな進行、よかったです!
開会のご挨拶は今年も静岡書店大賞実行委員長 江崎直利(藤枝江崎書店)より。「腎臓はおとなしいけれど
ないがしろにしてはいけない。書店も図書館も一緒です。機能が衰えたら不自由ですけど生きていけますが、
なくなったら完全に毒がまわってしまいます。健康でいるために、人間の体温と同様、紙のぬくもりというものを
信じ大切に保持増進をしていきたいと考えています。 必要な他の臓器が元気でいるためにももっと本と出会う
場所を増やし、相互を尊重し敬意を払い、補いながら役割分担に務めなければならないと考えております。私は
想像力や読解力不足の人間が住む町は共感力にとぼしくて住みにくいと思います。だから運動不足と言われない
ように、本屋ももっと本を知り、手間を惜しまず、頭と足を動かし、長生きしていかなければならないと考えています。
この会はそのために良い場所と機会にしていきたい。」と、腎臓を交えたいいお話でした。
乾杯のご発声はKADOKAWAの高橋さんに。「静岡書店大賞、回を重ねるごとに書籍の売上が右肩上がりという
ことで、実行委員会の皆さんの努力でここまで大きくなったというところで、10回20回、50回100回と、静岡県民の
文化に根付くというところまでいけたら本当に嬉しく思います。」と力強いエールをいただきました。
中締めのご挨拶は静岡県立中央図書館 館長 河原崎全さん。「自主的にやるというのはある意味不安定なところも
ありますが、気持ちがこもっている分だけ強いイベントだと思う。皆様方の気持ちに支えられて6回めになったのかな
と思います。図書館も途中から加えていただき、昨年より4倍の投票と聞きました。ただ元の数が少なかったものです
から、絶対数はそれほどでもない。来年また4倍になるか保証はありませんが、呼びかけていきたい。大商談会の方
も市町の図書館にお声かけをさせていただきました。地方では図書館と書店が手を組んでいろんなことをやっていき
ましょうということが広がるのではないか。静岡はこのイベントをひとつの起爆剤にして、書店、図書館、本を作って
くださる出版社の方がタッグを組んでいけたら一番いいのかなと。11/6の県の図書館大会で『あるかしら書店』を紹介
させてもらいました。「あるかしら書店」という書名ですが、その中にラブリーラブリーライブラリーという項目があり、
図書館の職員として元気が出るといいますか、嬉しいな、心があったまることが書いてあります。一冊の本の中に
書店さんと図書館の両方が一緒になっているというのは嬉しいなと思いました。これからも皆で出版文化を支えて
いかねばなと改めて思っております。」と、書店・図書館の協働の背中を押していただくメッセージ、嬉しかったです。
最後に、静岡書店大賞 創始者である高木久直さん(戸田書店掛川西郷店)から締めのご挨拶。皆さん、聴き入っていました。
「6年前、伊豆の方から湖西の方まで、休日を利用して書店の経営をしている皆さん、店長の皆さんにこういうのやりたいねと話をしたのが5年前。週休2日の3ヵ月間を書店まわりに費やしました。おそらく静岡県を回っているどこの出版社の営業さんよりも静岡の書店に足を運んだ3ヵ月間だったのではないかなと思います。ただその頃には目の前に広がる光景、
全く想像ができませんでした。今日聞き及んだところによりますと、ここに
お集まりいただいた方は390名に上ると聞いております。390名ですよ。
ぼくら書店、図書館、静岡の出版業界に携わる皆、ものすごい力をいた
だきました。感激しております。今日いただいたパワーを今ここだけの盛り上がりにしてはいけないと痛切に感じております。内輪の盛り上がりに留めることなく、今から読者を育てる、読者をクリエイトする、読者を育む、そういう活動に前進していかなければならないのではないかと痛切に感じております。今日は静岡の葵タワーにお集まりいただき、感謝の念に堪えません。また来年再来年、この取り組みが続けられるよう我々実行委員も頑張ってまいります。何とぞ応援のほどよろしくお願いいたします。」
高木さんが訪ねて来てくださった日、忘れません。自らの意志でたった一人で県内の書店をまわっていると伺い、
その熱意と真摯な姿勢に心打たれました。思いはあっても、実現はなかなかできないことだと思います。実行力、
本当に頭が下がるばかりです。継続は力なり、来年も気持ちを一つに頑張っていきたいです。
静岡県内の書店、図書館で静岡書店大賞のフェアを展開しております。多くの方々に受賞作品を楽しんで
いただけるよう、これからも力を入れてまいります。皆様、2018年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
Posted by 静岡書店大賞SST at 20:03
│2017年 第6回 静岡書店大賞