2014年09月23日

2013年 第2回 静岡書店大賞寸評…「小説部門」

静岡書店大賞「小説部門」~書店員・図書館員たちの寸評~

「小説部門」は、いとうせいこうさんの『想像ラジオ』が大賞でした。授賞式で、いとうさんが気さくに皆さんとお話してくださり、快く写真撮影に応じてくださったことが忘れられません。地方の手作りの静岡書店大賞を、作家さんや出版社さんが喜んでくださるというのも、本当に嬉しいことですface03

●『聖なる怠け者の冒険』朝日新聞出版  森見登美彦
本の中に、すいこまれてしまいそうになるほど夢中になれます。不思議な気持ちになれるステキなお話です。
(谷島屋書店磐田外商部 渡辺)

●『風に立つライオン』幻冬舎  さだまさし
読んでよかったと思える作品。初めは少し読みづらいと思ったけど、最後はハマっています。バトンは繋がっていると思い感動させられる。「ガンバレ」は自分を叱咤する時の言葉は印象深い。
(県内書店スタッフ)

●『お任せ!数学屋さん』ポプラ社  向井湘吾
題名を見た時、難しい言葉で書かれた堅苦しい数学小説かな?と思って恐る恐る読み始めました。ですが、私の思っていたのとは全く違い、読みやすい文章そして数学の内容もわかりやすく説明されていて夢中になって読んでしまいました。少し数式が出てくる所はスラスラ読めませんでしたが…恋愛話も入っていて、数学は嫌いでも恋愛小説は好きという方にも読んでほしい作品です。
(江崎書店小鹿店 スタッフ)

●『七つの会議』日本経済新聞社  池井戸潤
ドラマ化された池井戸潤氏の作品。原作はドラマとは違った面白さがあります。章ごとに、それぞれの登場人物の視点から話が進み、読み進める度、登場人物の別の一面があらわれ新鮮。章が繋がって一つの物語が完成する。読み終わった後、働くことの意味を考えさせられました。
(江崎書店小鹿店 スタッフ)

●『死神の浮力』文藝春秋  伊坂幸太郎
娘の死と復讐という重いテーマで、敵役がサイコパスとどんどん暗くなっていきそうですが、人間ではない死神とのユーモアのある会話が救ってくれます。この絶妙なバランス感が推薦したい理由です。
(島田書店外商部 佐塚)

●『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』幻冬舎 山田詠美
人間が一人この世から去るということが、どういうことなのか描ききっています。バランスを欠いたまま、それでも生きていかなければならない。人の死について、生きることについて深く考えさせられます。
(戸田書店沼津店 スタッフ)

●『双頭の船』新潮社 池澤夏樹
震災後を描くひとつのファンタジー。人間が生きていくには、土が、土地が、墓が必要だというのが興味深い。
(戸田書店静岡本店 田中)

●『アニバーサリー』新潮社 窪美澄
生きるって大変。でも生きなくちゃいけない。年代の異なる二人の女性の過去と現在を通して、未来をどう歩んでいくのかが描かれています。生と死、家族、人間関係など考えさせられるテーマが沢山詰まっている作品です。重いですが読後は温かい余韻の残る終わりとなっています。
(戸田書店リブレ裾野店 鈴木)

●『こんなにも優しい、世界の終わりかた』小学館 市川拓司
この本は、親と子ども、夫婦など様々な人々の愛のカタチが書かれていて本当に感動します。実際にこんな風に人生が終えることができたらどんなに幸せなのかなと思いました。最近、本を読んで泣くことがないという方に、ぜひ読んで号泣してほしいです。
(戸田書店リブレ裾野店 坂本)

●『昨夜のカレー、明日のパン』河出書房新社 木皿泉
夫婦脚本家、木皿泉、初めての小説!悲しいのに幸せな気持ちにもなれるのだと知ってから、テツコはいろいろなことを受け入れやすくなったような気がする。…この一文につきる。今、悲しみや色んな感情にとらわれてしまっている人に、そっと寄り添う一冊だと思います。
(戸田書店リブレ裾野店 藤本)

●『俺は駄目じゃない』双葉社 山本甲士
うだつのあがらない、巻き込まれ体質の35歳の主人公。まるで自分を見ているかのような残念さ加減なのだが、冤罪事件をきっかけに主人公の人生が大きく変わっていき、最後にはまるで映画「ロッキー」のようなヒーローぶりとなる。半沢直樹のような力強さはないが、それでも読後スッキリした気持ちになれるヒーロー物語。
(アマノ三方原店 橋本)

●『北の街物語』中央公論新社 内田康夫
内田康夫の大ファンです。
(谷島屋書店本沢合店 犬塚)

●「シャーロック・ホームズたちの冒険」東京創元社  田中啓文
田中啓文お得意のパスティーシュ小説集。特に「名探偵ヒトラー」がよかった。ノックスの十戒にはないけれど探偵とは、読者に愛される存在であるというのがセオリーなのに、世紀の嫌われ者ヒトラーをいかにして探偵役に仕立てあげたのか、名手の腕前拝見です。
(イケヤ文学館高林店 貝塚知香)

●「Another エピソ-ドS」KADOKAWA  綾辻行人
映画やコミックとは少し違う世界観で、死人と話せるという新しい展開がより楽しかった。
(TUTAYA佐鳴台店 スタッフ)

●「ロスト・ケア」光文社  はまなかあき
「ロスト・ケア事件」「尊厳死」「安楽死」人間の心は藪の中。ミステリーでありながら、巧みな展開で社会(世の中)に問いかける作。
(吉見書店外商部 杉山功)

●「泣きながら、呼んだ人」小学館  加藤元
はじめは題名にひかれました。泣きながら呼んだ人は誰?呼ばれた人は誰?物語は(非)日常を静かに映し出している内容ですが、読み終えた後、静かに心の底がほかほかと温かくなるそんな気持ちになりました。泣きながら呼びたいくらい大切な人たちがいるって、切ない……苦しい……けれど生きていく強味になっていることに気づかされた1冊です。
(吉見書店外商部 西谷友子)

●「爪と目」新潮社  藤野可織
芥川賞受賞作品、藤野可織さんの注目度がますます高くなっています。ストーリに吸い込まれていきます。
(吉見書店外商部 白井万記子)

●「湖底の城 第4巻」講談社  宮城谷昌光
人間の執念の極みとも言える主人公の生き様だが、私も含めて現代人でも同様のことができるのだろうか?
(吉見書店竜南店 曽根健太郎)

●「教場」小学館  長岡弘樹
警察学校を舞台にした独特な世界の中で繰り広げられる人間関係がリアルに書かれているミステリアス。
(吉見書店長田店 常木和幸)

●『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 幻冬舎 山田詠美 著
死と向き合う家族の話。一人の家族の死に対して変化した日常に対することが描かれている。
家族の大切さや、生や死について考えさせられる。
(吉見書店長田店 大倉)

●『旅猫リポート』 文藝春秋 有川浩 著
読み終えたのが仕事の休憩中でなければ、大号泣していたと思います。
優しくて切なくてあたたかい、素敵な作品でした。
(谷島屋呉服町本店 小泉)

●『本にだって雄と雌があります』 新潮社 小田雅久仁 著
フィクションのような、ノンフィクションのような…。ジャンル付けしづらい作品。
様々な要素がちりばめられていますが、それらがうまくまとまり終結する。
読み終えた時あたたかい気持ちになっている、読後感の良い物語だと思います。
(ぶっくす三峰 スタッフ)

●『七つの会議』 日本経済新聞出版社 池井戸潤 著
大人気作家の最新刊。最後まで一番悪い者が誰なのかわからないほどページをめくる手が止まらぬ作品。
弱い人への優しい視線と組織の中で働く者への熱きメッセージにはげまされ、力づけられる。
(シミズBOOKS 杉田)

●『ジヴェルニーの食卓』 集英社 原田マハ 著
4人の画家マチス、ドガ、セザンヌ、モネ短編集で、それぞれの人柄や生活、屋敷の様子までリアルに描写されています。今まで画家やその絵画の背景というのをあまり考えた事はなかったですが、今度彼らの絵を見る時は前とは違った気持ちで見ることになりそうです。
(マルサン書店仲見世店 スタッフ)

●『ランチのアッコちゃん』 双葉社 柚木麻子 著
読んでいて、おもわずおなかがすきます。「おなかすいたなぁ…。」と思わずつぶやいてしまいそうになりました。
カレーを食べるシーンではなんとなくカレーのにおいがしそうになるし、ポトフを食べるシーンでは心もあたたかくなった気になりました。
食べることって大事だなぁと、あらためて教えてくれた作品だと思いました。
(TSUTAYA佐鳴台店 杉山)

●『夢を売る男』 太田出版 百田尚樹 著
百田さんか池井戸さんが大賞。
(アマノアクト北店 市川)

●『旅猫リポート』文藝春秋  有川浩
とにかく泣ける1冊。サトルとナナのお互いを想う、強いきずなにグッときます。特に猫好き、飼っている方なんかはなおさら感情移入してしまうかも。生きるもの、いつか必ず何らかのかたちで別れがくるけれど、その時には笑っていたいと思わせてくれる作品です。
(吉見書店竜南店 スタッフ)

●『わたしをみつけて』ポプラ社  中脇初枝
親に捨てられて孤独の中に生きてきた主人公が、看護師長や患者との出会いによって少しずつ成長していく姿に感動した。
(吉見書店竜南店 スタッフ)

●『リカーシブル』新潮社  米沢穂信
新世代ミステリーの旗手としても注目されている作者だけあって、ただのミステリーだけでなくホラー色も漂い、読みごたえがあります。謎が解かれていく爽快感、ほろ苦い家族の過去は必見です。
(吉見書店竜南店 スタッフ)

●『政と源』集英社  三浦しをん
二人合わせて146歳!凸凹コンビな爺たちがいい味をだしています。
(吉見書店竜南店 スタッフ)

●『ロスジェネの逆襲』ダイヤモンド社  池井戸潤
ドラマ「半沢直樹」の原作の作品の1つで、ギリギリのところで駆けずり回っていたのが、最後の最後で倍返し!というところは、読んでいてハラハラもするし、スッキリもするのでとても面白いと思う。
(県内書店スタッフ)

●『旅猫リポート』文藝春秋  有川浩
語り部である猫と主人公の絆が、猫と人間にもかかわらず、確固とした友情で結ばれているのが見どころ。旅の理由が明かされずに物語は進んでいくが、猫たちの会話でだんだんと予想がついていく。待ち受けている結末があまり良い物でないと察することができるために、少し気が重くなるが、旅の中、主人公の生きてきた足跡をたどり、友人たちと再会していき、決していい思い出だけではないが、彼らの確かな温かさに救われる。最後の猫の行動には鼻がツンとします。きっと猫のこのリポートは、コダマさんが、主人公に届けてくれるでしょう。
(谷島屋新流通店 水野)

●『旅猫リポート』文藝春秋  有川浩
旅猫リポートは有川浩の新作です。有川浩がデビューした『塩の街』の時から大ファンです。今回の話は『塩の街』のようなSFではないものの猫好きにはたまらない和やかな話です。ぜひ読んでください。
(谷島屋新流通店 スタッフ)

●『富士山大噴火』PHP文芸文庫  柘植久慶
震度6強の直下型地震後、富士山が大爆発し、それに伴い東海地震も発生し、大津波が襲ってくるという想定の物語です。けっして避けることのできない自然災害における壊滅的被害想定を静岡県民なら1度シミュレートしておく必要性があると思うので薦めます。
(県内書店スタッフ)

●『何者』新潮社  朝井リョウ
今時の就活をSNSを絡めながら描く、正に“今でしょ”という作品。等身大の若者を繊細に描く朝井リョウの感性がすごい。就活前、就活中の学生、親御さん、企業の人事担当者にぜひ読んでもらいたい。
(藤枝市立岡部図書館 宮島)

●『世界地図の下書き』集英社 朝井リョウ
大切な人の為に、自分達の境遇も大変なこども達が協力してひとつの事を成し遂げていく所がすごいと思います。みんながお互いを思いやっているのが伝わってきました。
(谷島屋呉服町本店 田島真由美)

●『ランチのアッコちゃん』双葉社 柚木麻子
ランチを交換したことから始まる思いもよらない展開。元気になれる本です。
(谷島屋本沢合店 スタッフ)

●『はだかんぼうたち』角川書店 江國香織
江國香織の恋愛小説は、やっぱりいいです。
(谷島屋浜松本店 合谷雅子)

●『翼の帰る処』④上 幻冬舎 妹尾ゆふ子
病弱で隠居を求める36歳の中間管理職のオッサンが主人公。生真面目で自ら苦労を背負いこんでいく。キャラクターが生き生きと描かれていてキャラの悲喜交々が非常に楽しい。続きがすぐ読みたくなるが割りと待たされる作品。
(書店員)

●『想像ラジオ」河出書房新社 いとうせいこう
DJアークがパーソナリティをつとめる「想像ラジオ」は「想像」という電波を使って「想像」の那珂だけで聞こえるラジオ番組が舞台。震災関連のお話です。最期の声を聞きたい、伝えたい想像ラジオが本当にあったらどうなんだろう。読む人によって印象が変わりそう。
(谷島屋 本沢合店 佐々木健次)

●『想像ラジオ」河出書房新社 いとうせいこう
あの日私たちはただただ祈ることしかできず無力であった。
私たちは何ができるのか。何をすべきなのか。まずはこの本を読もう。そして想像しよう。耳を澄ませば私たちにもあの“救いの歌”が聞こえてくるはずだ。
(谷島屋 専務取締役 斉藤晋一郎)

●『聖痕』新潮社  筒井康隆
性器を切除されたゆえに「性」の欲望から解き放たれた、美貌の少年の物語である。彼の身体に残る「聖痕」をいかに世間より秘して生きていくかの難しさが描かれ、彼の美しさによって彼自身が多くの苦難に見舞われるのだが、それを語る筆致、文体というものに、この作品の魅力がある。読みづらさを超えて尚、日本語というものの美しさを知るのである。そこに陶酔がある。
(戸田書店掛川西郷店 スタッフ)

●『神去なあなあ夜話』徳間書店  三浦しおん
山の仕事にもなれ、たくましく、そして強く生きていく。主人公(平野勇気)の成長と周りの人々あたたかさや、やさしさ、そして、周りの人たちの人生までも描き、涙、涙でした。地域とか、地元とか、周りの人を大切にしたいと思う一冊です。
(戸田書店掛川西郷店 スタッフ)

●『聖なる怠け者の冒険』朝日新聞出版 森見登美彦
京都、宵山。この一日に起こる不思議な冒険の物語です。正義の味方、狸のお面をかぶった正義の怪人、ぽんぽこ仮面をめぐって興味深い登場人物や団体がたくさん出てきます。一緒に京都を歩き回りたくなる楽しい一冊ですが、我が内なる怠け者にも思いやりを忘れずに…!
(戸田書店掛川西郷店 後藤公子)

●『快挙』新潮社 白石一文
夫と妻との間にある不確かだけれど必ずある空間(または溝)を淡々と鮮明に描いているとても読みごたえのある小説。結婚生活の中に数多くある幸せと不幸。一歩一歩価値観を擦り合わせながら共有していく事の難しさと喜びを気付かせてくれる作品でした。
(戸田書店掛川西郷店 スタッフ)

●『生存者ゼロ』宝島社 安生正
未知の恐怖にさらされたとき人々はどう動くのか…… 権力に振りまわされる天才的学者達と自衛隊、国の危機に議員達はどう動くのか…… 内容は生死関わる重いものですが、最後まで飽きずにサクサク読める作品、お勧めです。
(谷島屋ららぽーと磐田店 スタッフ)

●『教場』小学館 長岡弘樹
張りめぐらされた伏線、予想をはるかに上回る結果、警察学校がこれ程までに過酷な所だったとは。
警察官を見る目が変りました。
(谷島屋ららぽーと磐田店 スタッフ)

●『こんなにも優しい、世界の終わりかた』小学館 市川拓司
便利な世の中になりながら一方で忙しない生活に追われ、人への思いやりや労り、優しさをどんどん失っていく現代において、ふと立ち止まってこの本をゆっくり読んでもらいたい。
(谷島屋ららぽーと磐田店 富永哲司)

● 『昨夜のカレー、明日のパン』河出書房新社 木皿泉
お話の空気が好きです。読みながら物語の中に入りこみたくなります。
(谷島屋浜松本店 前嶋裕美)

●『2.43』集英社 壁井ユカコ
青春そのもの!熱い部活動、仲間は高校時代に体験できなかったので今でもあこがれています。
(谷島屋浜松本店 黒野瑞姫)

●『ドラゴンフライ』KADOKAWA 河合莞爾
まずプロローグの12ページを読んで欲しい。それだけで絶対ひっかかる何かがある。そこからラストまで一気に読ませるスピード感・世界観が心地よく、気が付けばすっかり心を持っていかれていた。“真実なんて、ない”ならば何が真実なのか…。デビュー2作目でこのクオリイティー。先が楽しみで仕方ない。
(ジャック鷲津駅前ブック館 山本幹子)

●『浅き夢見し』小学館 押切もえ
思っているだけでは何も変わらない。挫折もある、空回りもある、でも全ての事に意味があるんだと思います。行動する為の第1歩、勇気をもらいました。
(江崎書店袋井店 小野妙子)

●『昨夜のカレー、明日のパン』河出書房新社 木皿泉
旦那さんが亡くなった後も義父と同居生活を続けている徹子。血のつながりはないけれど、周りの人たちと関わりながら、大切な人の「死」をゆっくり受け入れて今を大事に生きている感じがします。
(江崎書店袋井店 鈴木)

●『キズアマ』新潮社 近藤史恵
前作までのプロの世界から一転、今回は大学自転車部に舞台を移し、しかも主人公はそれまで自転車レースとは無縁の青年。この設定だけで、その後に展開されるであろう熱い物語に期待するというものです。そして実際にその期待を裏切らない青春物語。映画に向いていると思います、ホントに。
(県内書店スタッフ)

●『月下上海』文藝春秋 山口恵以子
スキャンダルを逆手にとりのしあがった令嬢多江子の強さ、したたかさには舌をまきます。「松本清張賞」を取っただけのことはあります。そして作家さんの職業を聞いてなお驚きました。
(マルサン書店仲見世店 荒井浩子)

●『光秀の定理』KADOKAWA 垣根涼介
明智光秀といえば、まっさきに「本能寺の変」「信長を殺した男」が思い浮かびます。そのイメージが強すぎて彼本来の姿が隠れてしまっていたのかもしれません。私たちがイメージする光秀は、よく言えば気品があり理知的・悪く言えば狡猾で策略好きではないでしょうか。しかしこの作品では涙もろく人懐っこい姿を見せてくれます。しかも没落した一族郎党を盛り立てていかなければならない宿命を背負い奮闘しているのです。一生懸命なのです。この作品でやっと血の通った光秀本人に触れた気がしました。この段階を過ぎていき、彼の心情・立場を目の当たりにすればするほど、なぜ信長を倒さなければならなかったのかという納得できる理由が浮かび上がってくる。2人の親友の登場も光秀の心情を理解するうえでたいへん重要な役割を果たしました。おススメの歴史小説。
(マルサン書店仲見世店 小川誠一)

●『国語、数学、理科、誘拐』文藝春秋 青柳碧人
タイトルが最初なぜ科目=誘拐になるのか?と思っていて読むにつれてなるほど…と思うようになりました。誘拐の原因は今の社会にもっともありがちな理由になると思います。物語だけで楽しみたい内容ですね。
(マルサン書店仲見世店 スタッフ)

●『ミリオンセラーガール』中央公論新社 里見蘭
出版業界のお話です。キャラクターが豊かでタッチが漫画的なのでコミックに慣れ親しんだ身には読みやすい本でした!とても勉強になりました。
(ジャック鷲津駅前ブック館 内藤沙織)

●『ことり』朝日新聞出版 小川洋子
小鳥の唄に耳をかたむけ暮らしている兄弟の一生。言葉の一つ一つが頭の中にしみこんでくるような語りにひきこまれます。読み終わったあと、兄の話すポーポー語を聞いてみたいと願うほど、大好きな作品です。
(本の王国浜松西店 高林哉子)

●『夢を売る男』太田出版 百田尚樹
本屋がこんな本薦めちゃいけないかも。でも面白いんだもん。今の出版界(作家、出版社、編集者、取次…そしてもちろん書店も)の暗部(っていうかダメダメなところ)を鋭くえぐる本。重た~いテーマから、ライトなブラックコメディを産み出してしまう作者の手腕に素直に脱帽します。ケンカを売られた業界の諸君、頑張りましょう!
(港書店 斉藤和志)

●『空白を満たしなさい』講談社 平野啓一郎
生と死。自分。他者。一度死んだ人間が還ってくることで浮き彫りになるテーマは深く重いけれど、あたたかな光をもっているラストの余韻がいまでも忘れられなくて選びました。
(丸善&ジュンク堂書店新静岡店 スタッフ)

●『バージンパンケーキ国分寺』早川書房 雪舟えま
妙な気負いがなく、すんなり読み進めることができ、読むという行為自体が楽しかった。歌人でもある作者の言葉の使い方(?)が私には心地よく受けとれたからかなぁと思う。このパンケーキ店での登場人物たちの行く先、未来、過去、今日、明日、そのつながり、交錯する思い、何かを選びとる・選ばないという複雑な関係が、本当にパンケーキのようにふんわりまとまっていて好きだなぁと思う。
(ザ・リブレット丸井静岡店 本道ちひろ)

●『丕緒の鳥』新潮社 小野不由美
十二国記の世界観が更に深まる短編集で、本編の続きにとても期待が高まりました。
(夢屋書店ピアゴ香貫店 大川理恵)

●『神隠し』日本経済新聞出版 長野慶太
アメリカの経済合理主義的な法制度への問題提起、アメリカと日本の制度の違いを利用した事件のトリックとアメリカ人と日本人の違いから解かれていくトリックの謎、それぞれの家族のあり方がよく描かれていて、社会派、ミステリー、ヒューマンドラマを同時に味わえる作品です。
(江崎書店小鹿店 スタッフ)

●『ランチのアッコちゃん』双葉社 柚木麻子
落ちこんでいても、目の前においしいものがあれば人は元気になるものなのでしょうか。食を通して主人公が前向きになっていくさまは、なんだか、こちらも元気をもらえます。読んでいると、おなかがすいてきます!
(マルサン書店駅北店 スタッフ)

●『死神の浮力』文藝春秋 伊坂幸太郎
読んでいて、何度も再認識させられる。「あー、こいつ死神なんだ」。人間に興味などない。だけど仕事はやる死神、千葉。そんな彼と読み進めるミステリーは毛色が違う。だって死を司る存在が彼なんだもの。だから先が全く読めなかった。胸もだんだん苦しくなっていく。千葉よ、あなたの答えはなんなんだ!
(戸田書店掛川西郷店 吉田祐輔)

●『カジュアル・ベイカンシー』講談社 J.K.ローリング
一人の人間の死が様々な思惑をあらわにし、ある者には希望をまたある者には絶望を味あわせる。物語は様々な人間の視点を経て、一つの真実へとたどりつく。1・2巻を合わせて読むとすっきりした気持ちになれます。
(吉見書店竜南店 大髙宏之)

●『小説 仮面ライダー電王』講談社 白倉伸一郎
仮面ライダーシリーズの書き下ろしでファンとしてはありがたい作品でした。
(県内書店 小渕史織)

●『ヴァンパイア・サマータイム』エンターブレイン 石川博品
ライトノベルレーベルからの発行だが、恋愛小説として一般受けもしそうな内容。
好き合っていながら、人間と吸血鬼の間にある埋められない溝に悩む主人公とヒロインに共感できる。切なくも希望のあるラストもマル。
(BOOKアマノ アクト北店 鈴木啓介)

●『三国志』新潮社 吉川英治
吉川英治の三国志が新装版として出た。表紙が華やかで良く、驚いたことに、文章が全く古く感じない。内容は、吉川英治らしく、生まじめで整った感が出ていると思う。裏切りの無い武勇ファンタジー、「三国志」と言えば、宮城谷昌光や、北方健三と言う現代作家が台頭していたが、「吉川英治がいる!!」と納得できるシリーズ。三国志は作家ごとに様々にアレンジされるが、吉川英治作品それぞれが寄せる想いが清らかで美しい。
(県内書店スタッフ)

●『駅物語』講談社 矢野帰子
いつも利用している駅。普段なら定刻の電車に乗って目的地まで運んでくれるとても便利な乗り物。そう思いがちだけど本書では定刻に発車させることのむずかしさなどをクセのある同僚に囲まれながら新人駅員・若菜の日々の戦いが描かれています。本当に毎日ご苦労さまと言いたい。
(県内書店スタッフ)

●『駅物語』講談社 矢野帰子
大学時代、駅はいつも利用する生活の一部でした。具合が悪くなった時、駅員室で休ませてもらったり、人身事故で電車が止まった時、パニックと怒号に包まれる車内で走り回る車掌さんたち、この本を読むとその時の事がなつかしく思い出されます。明日から電車を利用する時は駅員さんに笑顔であいさつしたくなる、そんな作品でした。
(戸田書店城北店 髙木春佳)

●『夢を売る男』太田出版 百田尚樹
社会風刺的なブラックジョークと言うような話で、現代の人には、読みやすい話になっていると思われるから。
(戸田書店城北店 スタッフ)

●『ヨハネスブルグの天使たち』早川書房 宮内悠介
今一番旬な作家さんだと個人的に思っている。処女作『盤上の夜』(東京創元社)に続き、今作も直木賞候補となった。しかしその割に知名度があまり高くないように思われ、悔しいのでぜひお薦めしたい。SFの連作短編集だが、むしろ従来のSFファンでない人たちに読んでもらいたい。今年の9月11日には、この本に収録されている「ロワーサイドの幽霊たち」を読んでいた。世界貿易センタービルの過去とあの日と未来の話。最後の短編「北東京の子供たち」のラストで泣いた。みんなもっと宮内悠介を読もう。
(戸田書店リブレ菊川店 赤堀久住)

●『ローカル線で行こう!』講談社 真保裕一
赤字続きのローカル線、もりはら鉄道の新社長に抜擢された篠原亜佐美は、赤字を解消すべく、様々な企画を計画し、実行して行きます。“マイカー”派ではなく、昔からずっと“公共交通”派である私には、鉄道再生に賭ける亜佐美の姿が頼もしかったです。現実はこの小説のようには上手く行かないでしょうが、「お金がないなら、知恵を出そう」という姿勢に勇気付けられました。
(浜松谷島屋医大売店 高柳俊彦)

●『残り全部バケーション』集英社 伊坂幸太郎
テンポの良いストーリーと印象的なセリフで読みやすく、なおかつおもしろい! 伏線もバッチリあって、読み終えると「あ…ここにつながってたのか!!」となって、もう一回読みたくなる。
(戸田書店江尻台店 山崎圭美)

●『ちょうちんそで』新潮社 江國香織
行方不明の妹をまるで目の前にいるかの様におしゃべりを楽しむ。たとえ存在感がなくても、常に“想う”ことは、“愛する”という事を教えてくれる作品です。
(戸田書店江尻台店 スタッフ)

●『海の見える街』講談社 畑野智美
図書館で働く4人の物語。それぞれのキャラクターが本当に魅力的。さわやかな文章なのにどうしてこんなにも心に深く刺さるのだろうか。
(谷島屋エキマチ店 丸林篤史)

●『旅猫リポート』文藝春秋 有川浩
猫を飼っている人でもそうでない人でも読んでほしい作品。ただ純粋に泣けます。
(戸田書店リブレ菊川店 飯田妙子)

●『ライオンの棲む街』祥伝社 東川篤哉
ライオンの棲む街の会話がかみあって無いのに会話が成り立っている2人が、何故、事件の真相に近づいているかという不思議な気持ちで読めるミステリー小説です。
(戸田書店リブレ菊川店 横山英彦)

●『憧れの女の子』双葉社 朝比奈あすか
詳説は全般的に苦手な部類です。『憧れの女の子』はそれでもすんなりと物語世界に入っていけた、というか、心の隙間に入り込まれてしまったというべきか。最初の「夫婦」編が好きですが、おすすめは次の「恋人」編。
(戸田書店 仕入部 藤浪哲也)

●『南部芸能事務所』講談社 畑野智美
弱小事務所の芸人たちが売れたいと夢に向かって頑張ろうとする姿や、彼らを応援するファン、芸人たちの舞台を見て、憧れて、自分もなりたいと思う主人公たちの前向きなところに、読んでいて自分も励まされました。
(BOOKアマノ 入野店 山本明広)

●『人間の運命』勉誠出版 芹沢光治良
これを薦めずして何を薦めましょう。貧しくとも生きる次郎を通して日本人のこころに触れる、郷土が誇る文豪の「生涯の作品」。
(マルサン書店 駅北店 川口 慶)

●『自殺の国』河出書房新社 柳 美里
何年も何年経っても色褪せることなく読み継がれる、普遍性をもった作品が素晴らしいのは間違いないが、その時、その時代と心中しているような作品もなくてはならないと思う。死ぬことを考えるのは悪いことではない。死ぬことを考えれば生きるということを真剣に考えられるはずだから。当時中3だった娘にこの本のことを話したら「もう、古い」と言われてしまった。娘は一日中スマホを手放さない。
(書店員)

●『本にだって雄と雌があります』新潮社 小田雅久仁
どこまでが本当で、どこまでがウソかわからない冗長な文体なのに、次にどんな展開が来るのかわからず、ノンストップで読んでしまいました。自分の本棚で本同士が結婚したら…と考えると、本好きにとっては恐ろしくも楽しみなのではないでしょうか。
(図書館員)

●『聖痕』新潮社 筒井康隆
幼い頃に生気を取り除かれ、性欲も失った美少年の反省を描いた物語。物語自体も大変面白いが、主観が入れかわり、文体も交ざり合う、そして枕詞や古語が多用されているのが、日本語としても、とても面白い。筒井先生の語彙の多さ、当て字の絶妙さには脱帽!!
(TSUTAYA 佐鳴台店 山田志津香)

●『碧空のカノン』光文社 福田和代
とてもほんわかした雰囲気の作品で、自衛隊のことも音楽のこともわからなくても楽しめます。また、表紙のイラストもかわいらしくてオススメ。
(谷島屋書店イオンモール店 鈴木千尋)

●『壺中の回廊』集英社 松井今朝子
歌舞伎座新開場という年に、大正時代の歌舞伎の世界が現代と重なる世情で、ミステリー仕立てでタイムリーに描かれている。作者は時代小説の第一人者であり、朝日新聞社時代小説大賞の選考委員にふさわしい作品。
(谷島屋呉服町本店 三上京子)

●『襲名犯』講談社 竹吉優輔
ミステリー小説としては最後の「どんでん返し」も含めてオーソドックスな構成だが、人物の感情表現が面白く、それが上手く殺人の動機や猟奇的な殺人の理由にもつながっていて、各キャラクターにも感情移入しやすかったです。読み終わった後にはちょっとせつなくなる内容です。襲名犯というタイトルの理由にも注目です。
(谷島屋呉服町本店 望月武尊)

●『七つの会議』日本経済新聞出版社 池井戸潤
ビジネスマンの会社での立場などがよくわかる。取引先との細かいやりとりがリアルに書かれている。
(県内書店スタッフ)

●『64』文藝春秋 横山秀夫
やっぱり警察小説は面白い。題名からも昭和64年の事件から64なんて思ってもみなかった。読んで満足感たっぷりでした。やっぱり横山秀夫さんは、いいですね。
(県内書店スタッフ)

●『わたしをみつけて』ポプラ社 中脇初枝
人との関わりを避け、「いい子」でいることで居場所を失わないよう、ひっそり生きてきた看護師の弥生。孤独な弥生がすばらしい師長やあたたかい患者さんによって心を開き、成長していく姿に感動しました。一歩踏み込んだ他者の働きかけが誰かを救う…何度読み返してもラストは涙があふれます。前作『きみはいい子』とぜひ併読を!
(吉見書店外商部 吉見佳奈子)

●『旅猫リポート』文藝春秋 有川浩
斜に構えた態度の猫「十十」と相棒の「サトル」。言葉は一方にしかわからなくても心は通じている。1人と1匹のベタベタするわけではないけれど互いを尊重しあう様が見ていて気持ち良く、ラストも心に染みわたります。
(イケヤ文楽館湖西店 スタッフ)

●『光秀の定理』角川書店 垣根涼介
勝者によって描かれ、敗者の真意は伝わらないのが歴史の道理。わかっている。分かっているが、タイムマシーンがあったなら、本能寺前夜の光秀と一献かたむけてみたいと切に願った。今年度、最高傑作のエンターテインメント時代小説に間違いない!信長よりも秀吉よりも家康よりも、俺は光秀が好きになった。
(戸田書店掛川西郷店 高木久直)

●『世界地図の下書き』集英社 朝井リョウ
登場人物の子どもたちは、自分なんかよりずっと大人びていたため、あまり共感はできなかったけれど、辛いときは逃げてもいい、選択肢は他にある、といったメッセージは心に残りました。いじめなどが社会問題になっている昨今だからこそ、今つらい子も、そうでない子も、そして大人にも読んでほしいと思いました。
(戸田書店城北店 伊達沙織)

●『ともに戦える「仲間」のつくり方』ダイヤモンド社 南壮一郎
ビジネス書ですが、内容は小説っぽいので許して下さい。中学時代、サッカー部で右サイドを組んでいた仲間が、ものすごく活躍しているみたいです。まさかこんなかたちで「再会」するとは!昔の仲間を応援する意味でもこちらに一票をお願いします。
(BOOKアマノ入野店 松本浩憲)

●『想像ラジオ』河出書房新社 いとうせいこう
第五章に出てくる想像ネーム・タラモサラダさんの語る、彼女の一日の場面が好きで、何度も読みかえしました。こういう、なんてことのない当たり前だけどすごく満ち足りていて、輝いてみえる日常を奪ったのが、あの震災だったのだと想像しました。想像していくことで、誰かに思いを寄せることで、亡くなった人と、生きている人は、つながるのだと思いました。
(ザ・リブレット丸井静岡店 佐野詠子)

●『死の淵を見た男』PHP研究所 門田隆将
小説ではなく、ノンフィクションである事を承知の上ですが、現在、尚、大きな問題が発生している福島第一原発で、巨大地震と大津波の中で何があったのかを知る事は、浜岡原発をかかえ、大地震が予測される静岡県民にとって必要なことだと思う。
(谷島屋書店 永田成男)


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Posted by 静岡書店大賞SST at 15:21 │寸評